JIA 公益社団法人 日本建築家協会東北支部 The Japan Institute of Architects Tohoku Chapter

「東北支部」ニュース

JIA東北学生卒業設計コンクール2022審査結果・作品講評

日 時:2022年3月23日(水)13:30~18:00
会 場: (応募者・審査員)Zoom (事務局)日本建築家協会東北支部事務局
出席審査員:進藤勝人(審査員長、東北支部長)、福士譲(青森地域会)、
茂木聡(秋田地域会)、六本木久志(岩手地域会)、安田直民(宮城地域会)、
本木大介(山形地域会)、齋藤 史博(福島地域会)
事 務 局:櫻井一弥(事業委員長)、佐藤充(卒コン担当)

応募総数:11 点
1.審査方法
・ 応募者より提出されたプレゼンテーションシートならびに設計主旨をまとめたテキストファイルを審査員に事前配信し、作品の読み込みをしてもらった。
・ 応募者に、Zoom 上で画面共有をして模型映写及び作品の概要を説明してもらい、それに対して質疑応答を行った。発表時間は13分、質疑時間は7 分の計20 分が一人あたりの持ち時間であった。
・ 全ての発表終了後、審査員一人あたり3票を持ち票として投票を行った。

2.審査経過
・ 開票を行い、以下の5作品が票を獲得した。
No.2 3票
No.3 7票
No.5 1票
No.6 2票
No.9 6票
No.11  2 票

3.審査結果
・ 審査の結果、得票通りNo.3 を最優秀作品、No.9 とNo.2 を優秀作品とし、これら三作品を支部選考作品として全国コンクールに選出することとした。
※JIA全国学生卒業設計コンクール2022は6月18日(土)開催予定です。開催方法等ご案内は後日。
なお、各作品の評価については、作品ごとの講評を参照されたい。
(卒業設計コンクール実行委員)

最優秀賞
新潟市古町地区再生案
東北芸術工科大学 三富 俊

既存の古町花街の衰退した街並みを、「界隈性」「スキマ」という問題視されやすい部分に光を当てたことに賛辞を送ります。一般的再開発手法である大型ビル等ではなく、ヒューマンスケールを中心とした小規模6タイプのユニット。連続、不連続という人間生活にありがちな事象を混沌とした空間として提案し,破綻させない空間造は、斬新でかつ人間味のある温かさを感じます。表現方法も秀逸で、提案内容とみごとに合っています。内容の濃い素晴らしい作品でした。
実現性の可否を論ずるのは、野暮と言えるでしょう。
(秋田地域会 茂木 聡)

優秀賞
潜む空きと住まう~モラトリアムを要する商店街~

仙台高等専門学校 鈴木 香澄

日本全国で街が衰退していく。様々な提案がなされてきましたが、良い結果につながった例はまれでしょう。本案は、衰退していく街並み問題を、衰退を価値に転嫁する面白い提案です。
「街は通りである」と考え、通りにどのように価値を付加するか、考えられています。
人の集まる場所は、ヨーロッパでは広場、日本では小路。本提案ではモラトリウム道路と名付け、通りを造り、仕掛けを付加しています。日本古来の小路文化と合致し、楽しい空間が想像できます。
小路の先に見えてくるものを表現できていればより素晴らしい作品になったと思います。
(秋田地域会 茂木 聡)

優秀賞
峠の集落 ―小さな建築の大きな役割―

日本大学 山口 和紀

タイトルと共に紙面トップを飾る模型写真が一つの情景を思わせる好印象な作品である。
今や卒業設計とは切っても切れない存在の建築模型は、オンラインにも関わらず十分見応えのあるもので、中山間地域における集落の再生という難しいテーマに真摯に取り組んだ姿勢が感じられた。
既存の風景や地域資源を活かして、里山の暮らしを維持し続けながらのコミュニティ再形成を目指す本提案は、大規模な再開発事業で人口増加を目指す商業主義とは一線を画したプログラムである。既存改修や新築による小規模な建築を通した、アクティビティ豊かな住人らによる協働のプログラムは、「集落全体が学舎」となるような印象を与える秀作の一つと考えられる。
(青森地域会 福士 譲)

※以降審査会発表順に掲載

杜との繋ぎ
東北学院大学 中村 駿介


自然と一体となったアリ-ナの提案です。
計画地は、青葉山と広瀬川に囲まれた自然豊かな環境にあり、仙台城跡・五色沼に隣接する歴史的にも魅力的な土地です。
五色沼はフィギュアスケート発祥の地であり、再びスケ-ト場を復活させたいという思いからアリ-ナ(スケート場)の提案がなされました。
計画にあたっては、市街地―アリ-ナ―青葉山を緩やかに繋ぐことを意識し、建物の高さを調整しています。また外周壁をガラス張りとし、開かれたアリ-ナ、自然と調和するアリ-ナを目指した提案となっています。
この建物で、最も特徴的なのは二つのアリ-ナを繋ぐスロープです。
二つのアリ-ナを繋ぐスロープが中央広場と絡み合い屋外に開かれた空間をうまく演出しています。
欲を言えば、北側の森・南側の広瀬川との繋がり、仙台博物館・仙台城跡とアリ-ナの関係性をもう少し考慮できたら、もっと魅力的な提案になったような気がします。
(東北支部長 進藤 勝人)

空間を織る ―着飾り、繕う建築―
東北工業大学 木村 華


捨てられる筈だった衣類を解体、素材を布選び、裁断、裁縫の三つの機能を渋谷区神宮前キャットストリートが立地で開かれたバザール空間の様な提案でとてもユニークな発想で好感が持てます。①ストリート周辺環境との関係性の提案。②ファッション街の裏通りとして三つの機能だけに止まらずくつろぐ空間、ワークショップなど参加できるシステム、ファッション発信機能(イベント空間)等の来場者の多様な活動への提案。③建築的には膜の構造体と弁当箱のように展示・作業の内部構造が別構造になっていますがファニチャーとして機能空間が散りばまれ一部吊り構造を取り入れて膜構造空間が全体の機能を包み込んで空間の連続性や変化があればさらに興味深くなると思いました。
(岩手地域会 六本木 久志)

Route Roots -花巻市中心市街地『学びと発見のまち』計画-
秋田県立大学 工藤 千紘


岩手県花巻市の中心市街地衰退に着目し、宮沢賢治の作品をヒントに「まち」と「空間」の提案を行った計画である。
「radiko」「tigo」というエスペラント語の「根」「幹」という言葉を手がかりに、「学び」と「まち」を関係づける空間を模索している。地方都市の中心市街地活性という今日的な課題に対して、多様な分野と深度をもつものとして扱われる多層的な「学び」を取り上げている点が興味深い。具体的には樹木の根と幹を都市に当てはめ、既存のまちのポテンシャルに注目しながら、3つのルートとその結節点に新たな建築空間を提案している。結節点を繋ぐ敷地の外にも注目する視点があると、さらに広がりのある展開が期待できたように思われる。
(宮城地域会 安田 直民)

ため池と川の合流点  ―これからの防災のための霞堤ミュージアム―
東北大学 小森 ゆりこ

常願寺川の霞堤遊水池内を敷地とした、点在型の「柔の防災を学ぶミュージアム」でした。「柔の防災」の実例として挙げられた常願寺川の霞堤や遊水池は、自然災害を幅のあるものとして扱い、冗長性をもった柔らものに見えましたが、本作品は、自然災害のベクトルや強さを限定しそれに呼応するものとなっていて、綺麗な造形とは裏腹に、硬さを感じてしまいました。また、ミュージアムが水没するという設定が、防災の本質から離れた軽いものにさせている点も残念です。技術や造形を学ぶための人が入らないパビリオンのような設定であればわかる気がします。自然への畏敬の念が滲み出てくると、意図するところに近づけたのではないかと思います。
(山形地域会 本木 大介)

限界集落と化した温泉街との向き合い方―青森市浅虫地区が迎えた転換期―
宮城大学 久米田 優紀菜


久米田さんについてはやむを得ない事情により審査会に出席できず悔やまれる所だと思いますが、我々もプレゼンテーションを聞いてみたかったという思いが残りました。
さて、本設計はかつて賑わいのあった青森市の浅虫温泉街が限界集落と化し、浅虫温泉を「知ってもらう」という手法で高齢者が安心して暮らし、新規移住者を獲得したいという内容です。
街外れの敷地Aは小山に挟まれ海岸に向かってせり上がっていく魅力的な地形に、海を望む図書館を計画しカフェや足湯の併設、同じ敷地内にねぶた小屋を配し、行ってみたいと思わせる場所づくりが良いと思いました。また、中心街の敷地Bに老人福祉センター等を計画し、それらを繋ぐ街道整備は観光客や住人に街歩きをさせるきっかけを与えているのが良いと思いました。
各施設における街を知ってもらい元気にする為の仕組みやデザインの考察、街歩きをしたくなる要素の考察を深める余地がまだまだ残っていると感じます。再考してもらえることを期待します。
(福島地域会 齋藤 史博)

道の駅を中心とした地域再生計画
宮城学院女子大学 吉田 瑠菜

宿泊施設を併設した街中の道の駅によって、地元の街・地域再生を目指す意欲的な作品である。建築形態としては蔵の気密性や断熱性に着目して、蔵をモチーフにしている点、それでいながら町家の造りと混在するなど集合体としての風景は興味深い提案となっている。また直売棟がありながらも、出来るだけ街中の飲食店を利用してもらおうという提案はとてもユニークな挑戦と思われる。一方で、道の駅棟については少し閉鎖的な印象が懸念される。先述の街への連続性を考えた際には、広場との関係性や多様な棟の建ち方など、全体の配置計画などにおいて、もう少し開かれた印象が出ると、より魅力的になったのではないかと感じられた。
(青森地域会 福士 譲)

下田市ペリーロード修景活性化計画
山形大学 廣瀬 和


本設計は、ペリーが歩いた道として知られる静岡県下田市のペリーロードの修景と地域交流拠点の設計でかつての風情を生き返らせる計画です。
修景については来訪者に魅力を感じてもらい、住民には愛着をもってもらい、街に賑わいを取り戻す為のきっかけであるとの説明でした。
きっかけ作りとしてはこれでも良いが、将来的な展望や街並みの保全の仕組み作りまで踏み込んでもらいたいと感じました。本人としてはその仕組み作りとして、ペリーロードの海側の端部に「フネテラス」と「カケハシ」を計画したと思いますが、ペリーロードの陸側の端部や中間にも連携する建物を配し、発展性を喚起される有機的な計画としても良かったと思います。
「フネテラス」については、船の竜骨と肋骨を模した屋根構造に帆の屋根を架け、ベイサイドに馴染む魅力的な建物の設計ができていると思います。
(福島地域会 齋藤 史博)

呼応する ―うるしとまちがつながる日常―
東北工業大学 吉田 陽菜子

ウルシの生産量日本一の岩手県浄法寺町の山間部に立地するウルシの育苗から生産、加工、製品の完成までの工程を体験できる作業場施設(SITE A)と、町の中心部に立地する製品の塗り工房や漆器のシェアスペース、シェアキッチン、漆の実珈琲、アートギャラリーなどコミュニティ空間を取り込んだ体験展示施設(SITE B)の二つの施設の提案です。実現しそうな施設で興味深い提案です。山間部に立地するSITE Aでは育苗や漆掻き山林を背景とする自然環境を取り込んだプレゼンテーションが欲しいと感じました。また、町中に立地するSITE Bでは実際の町の営みを平面計画に取り入れ、町と有機的な繋がりを持ったコミュニティ施設としての提案があればさらに面白くなるのでは、と思いました。
(岩手地域会 六本木 久志)